熊本日日新聞2004年4月22日夕刊掲載
『おかね教育』 子どものころから教えたいお金の話
フリーの編集者が映画関係の本を出そうと訪ねて行くと、消費者金融の看板がかかっている。「間違えたのかな」と思ったら、金融業のかたわら、出版社もしているとオーナーは話す。出版の話よりそっちの話が怖くて、とても面白い。そこで岩波新書から二人の共著として『借金中毒列島』を出した。さらにお金のことは子どものころから教育しなければ、と思うようになり、この本『おかね教育』(晶文社・一六〇〇円)が誕生した次第。
聞き手の編集者岸川真氏は若い。日本映画学校卒。話し手の室井忠道氏は六十歳。学生時代、先輩と呼び屋を始め、負債を抱えた。黒メガネの坊主頭の取立人がやってきて、「これは追われるより、追う方が楽しそうだ」とその世界に入ったそうだ。
家でも学校でもまともにお金について子どもに教えてはいないが、子どもの方が真理を知っていたりする。もう五歳で「これはボクのお金、触っちゃダメ」と所有権を主張する。ところが、国はまさに借金まみれなのに、不景気で困っている国民に消費を奨励して、結果としては自己破産者を急増させている。「国も親もお金のことを教える資格があるのかね」と室井氏。教育をするなら、子どもが生まれてからでは遅い。胎内のうちから。いやいやもっと先、親になる前から。結婚する相手の金銭感覚までちゃんと見定める必要があるとアドバイスする。
「お金を踏んでごらんなさい」と言う。バチが当たりそうで、だれもが躊躇する。お金は猫族で、悪女のようなところがある。紙幣だったら、まだ実感があるが、カードになると違ってくる。現金という感じがなくなり、とても怖い。
「お金を大切に思わない人はお金に嫌われますから、お金は集まらないね。一瞬集まるけども、必ず消えていく。バブル紳士のように」と話す室井氏に「そうですか」と金に縁がなさそうな岸川氏がのんびりとうなずく。そのツッコミとボケがいい。室井氏は消費者金融業から足抜けをしたそうだが、実に大変だったという。
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